~kemnpusの気紛れ日記~ 仕事柄更新・レスが遅れる場合があるけど許してネ


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首都高速3号線 22時 

「どちらまで参りましょう?」
眼鏡をかけた30代の男は俺の問いかけに答えずバックシートで「ふう」と溜息をついた。
それはわざと聞こえるように音にした溜息だった。
こういう場合は運転手に「何かあったんですか?」と尋ねて欲しいに違いない。
後の車がつかえてる。
俺は無視してもう一度行き先を尋ねた。
「あ、チケットなんで好きな行き方で構わないから高速使って東京の千代田区まで行ってくれる?」
この時間だと横浜郊外のこのローカル駅から都心まで約1万円はかかる。
”よし!”
朝から営業不振が続いていたから心の中で小躍りした。
”チケットだから好きな行き方で構わない”
このくだりが少し気になった。


駅のロータリーから出るのを待ちきれず彼は話を切り出した。
「やられましたよ。これ。」
振り向くと男は携帯電話会社のロゴが入った小さな手提げの紙袋を掲げていた。
いかにもこちらに”それがどうしたんですか?”と言わせたい切り出し方。
c0128722_1932115.jpg

要約するとこういう話だ。

購入した携帯電話が昨日メーカーから宅配便で届くはずだったのが、「精密機器」とシールが貼られて届いた荷物を見ると底が幾重もガムテープで補修されており、しかも肝心な携帯電話が入っていなかったそうだ。
Sという大手運送会社にクレームを入れると、しばらくして「トラックの中にありました!今からお持ちします」と連絡があったそうだ。

考えてみれば男が怒るのは無理も無い。
新品の携帯電話が輸送中梱包が破損し中身が空の荷物を届けた挙句、むき出しで荷台に転がってたそれを「届けます」じゃ。
丸二日かかりっきりになる程そうとうS社のクレーム対応は悪かったらしい。
さんざんもめた結果新しい物と交換させたらしい。


同情はする。
でも一番の問題はね、
この後部座席に座ってる「被害者」が延々とその話を続けてることなんだ。

東名川崎インターから都内に向かい用賀料金所を通過して首都高速3号線に入っても、その男は何かに取り憑かれたかのように興奮して喋り続けている。
こっちが雨が降る夜の高速道路を神経遣いながら運転してることも気にも留めず。


「私は博士号も持っていて翻訳の仕事もやってるから、今回のクレームで費やした時間をお金に換算すると…」
「友人の弁護士にも相談したが俺は正しい、勝てる」
「メディアにも財界にも知り合いが沢山いるからその気になればあんな会社…」
「電〇の副社長とも知り合いだ」
「あなたに言ってもしょうがないけど私はお金に困ってるわけじゃないんだ。私のバッグには常に30万円は入ってる、今日は40万ぐらい入ってるかな」

自分がいかに力があり正しく、いかに相手が間抜けであるか、そんな話ばかりだ。
うんざりした気分で俺の相槌もすっかり投げやりになっていた。
c0128722_2033193.jpg

谷町ジャンクション手前で渋滞がひどくなったので霞ヶ関出口から高速を出た。
皇居の桜田門付近を走ってる時彼は言った。
「今から彼女と会うんです。
この携帯電話はね彼女が欲しいって言ってたディズニーの携帯で、今日これを渡すって約束してたんです。
私は今34歳、彼女と結婚したいと思ってるんですよ。
こんなことで汚点を作りたくないじゃないですか。
そうでしょ?
やつらは私の人生に影響を与えようとしてるんですよ。」

”ちっちぇえ男だな!”

神田神保町で支払いを終えてもまだ喋り続ける彼を追い払うように降ろした。
S社からせしめたタクシーチケットだった。
彼の声が聞こえなくなった途端肩と言わず頭と言わずどっと疲れが襲った。
運転するのも嫌になってしまい車を脇に停めたまましばらく歩道で煙草を吸った。
都会の目まぐるしい車道を眺めながら。
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by kemnpus-ken | 2009-10-07 20:38 | ひとりごと(エッセイ)